高容姫 「金正恩の母」になった在日コリアン (文春新書 1497)
Amazonでチェックする高容姫の人生について調べている。知っていることがあれば少しでもいいので教えてほしいと説明した。彼は、困ったような、考えこむ表情を浮かべた。 「プライバシーに触れることを表で話すわけにはいかない。聞いている人がいるかもしれない。どうぞ上がってください」と家に招き入れられた。
本書 p.19
いぶかしく思った親族は、今度は万寿台芸術団が東京で行った公演の際、彼女に近づき「どうして無視するのか」「私たちを忘れたのか」と問い詰めたという。 容姫は「人違いのようです。平壌には私とよく似た帰国者がおりますので、国に戻ったら伝えます」と表情を変えないまま、あくまで別人を貫いた。
本書 p.134
本書は金正恩の生みの親で、金正日と婚姻関係にあったといわれる高容姫(コヨンヒ)について調べた本です。
高容姫は在日朝鮮人で、父親の高京澤(コギョンタク)と母親の李孟仁(イメンイン)との間に生まれました。父親は今の韓国の済州島出身で、大阪に密航し、暮らしていたと想像されます。その後、帰還事業で北朝鮮に渡ります。
本書の出発点は明確で、「在日朝鮮人だったのだから、いまも高容姫のことを知っている人がいるだろう」という疑問から出発し、関係者をあたります。その一人が冒頭の本書p.19にある、母親違いの兄、金正恩の伯父にあたる人から話を聞くに至ります。ただ、母親が違うこともあり、あまり交流はなかったようです。その他に同世代の人たちにもあたりますが、朝鮮総連から口止めされているのか、あまり目立った話はありません。ただ、生家を突き止めるなど、得るものはあったようです。
高容姫のお墓は最高指導者の母親でありながら、被差別対象の在日朝鮮人であるため、微妙な立場にあるらしく、撮影禁止となっているそうですが、訪問した英国の外交官がこっそり撮影したお墓の写真が出回っています。そこには、確証は持てませんがなるほどなと思わせるエピソードです。死去の日付は2004年5月24日です。その2日前には2回目となる小泉純一郎と金正日との日朝首脳会談が行われていました。2002年9月の最初の日朝首脳会談は午前1時間、午後1時間半の2回にわたって開催されました。しかし2回目の会談はわずか1時間半で終了します。本書によれば「この時、金正日は妻の危篤を知り、会談どころではなくなった」とのことです。裏は取れないとは思いますが、納得させられるエピソードです。
高容姫 「金正恩の母」になった在日コリアン (文春新書 1497)
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